「膝の軟骨が減っています」と言われて、「もう良くならないのかな」「手術を受けるしかないのかな」と不安に感じたことはありませんか。
変形性膝関節症の治療は、レントゲンの見た目だけで決まるものではありません。今の痛みや動きやすさ、毎日の生活で困っていることを確認しながら、ご自身に合った方法を考えていきます。今回は、治療を選ぶときに知っておきたいポイントをご紹介します。
膝では、どのような変化が起きているのでしょうか?
膝の関節では、骨の表面を覆う軟骨が、動きをなめらかにする役割を担っています。変形性膝関節症は、この軟骨に加えて、骨や関節を包む組織などにも変化が起こる病気です。加齢や体重、過去のけがなど、いくつかの要因が関係しています。
「立ち上がるときに痛む」「歩き始めがつらい」「階段の上り下りが大変」といった症状のほか、膝が腫れたり、曲げ伸ばしがしにくくなったりすることもあります。
痛みがあると、どうしても動く機会を減らしたくなるものです。ただ、活動量が減った状態が続くと、筋力が落ち、さらに動きにくくなることもあります。「年齢のせいだから仕方がない」と決めつけず、まずは膝の状態を確かめるところから始めましょう。
画像に加えて、「生活での困りごと」も大切です
レントゲンでは、関節の隙間が狭くなっていないか、骨の形に変化がないかなどを確認します。軟骨そのものは通常のレントゲンには写らないため、関節の隙間などから、その状態を間接的に判断します。ただし、画像に変化があるからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。
診察では、「何分くらい歩くとつらくなるか」「階段では手すりが必要か」「夜の痛みで眠れないことがあるか」なども伺います。膝の腫れや動く範囲、筋力、歩き方と合わせて、治療の方針を考えるためです。
同じ膝の痛みでも、半月板の損傷や、別の関節炎などが関係している場合もあります。症状に応じて検査を追加し、痛みの原因を確認します。受診時は、「買い物の途中で休むようになった」など、身近な場面をそのままお伝えいただければ大丈夫です。
当院が大切にしている、リハビリでの改善
当院では、リハビリを通して、膝の痛みや動きにくさを改善し、日常生活でできることを増やしていくことを大切にしています。痛みを和らげることに加えて、「立ち上がる」「歩く」「階段を使う」といった動作が、少しでも行いやすくなることを目指します。リハビリは、すり減った軟骨を元どおりに再生させることを保証する治療ではありません。
リハビリでは、まず、痛む場所や腫れ、膝の動く範囲、筋力、歩き方などを確認します。同じ変形性膝関節症でも、困っている動作や体の状態は一人ひとり異なるためです。そのうえで、医師の診察を踏まえ、状態に合った運動や生活の工夫を考えていきます。
例えば、診察で運動が可能と判断された場合に、次のような内容を組み合わせます。
- 筋力の練習:太ももなど、膝を支える筋肉を働かせる練習を行います。例として、座った姿勢で膝をゆっくり伸ばす練習などがあります。必要に応じて、股関節まわりの筋力にも目を向けます。
- 曲げ伸ばしの練習:膝の動く範囲を確認し、状態に合わせて動かします。強い痛みを我慢して、無理に曲げたり伸ばしたりすることは避けます。
- 動作の練習:立ち上がりや歩行など、実際に困っている動作を確認し、筋力やバランスに合わせた練習につなげます。
「何回やればよいですか?」という疑問もあると思いますが、運動の回数や強さは一律ではありません。ほかの方と同じ量をこなすことより、ご自身の膝に合った方法を無理なく続けることが大切です。
運動を始めた頃は、軽い痛みを感じることもあります。一方、痛みや腫れが強くなったり、翌日までつらさが残ったりするときは、回数や強さを見直す目安になります。無理に続けず、医師や理学療法士にご相談ください。腫れや痛みが強い時期には、運動よりも負担の調整や原因の確認を優先することもあります。原因によっては、一時的な安静や固定などが必要になるため、自己判断で運動量を増やさないでください。
ご自宅で取り組む運動も、現在の状態や生活に合わせて相談していきます。通院中の練習と自主練習をつなげ、痛みだけでなく、「前より歩けるようになったか」「立ち上がりが楽になったか」などを確認しながら、内容を見直します。
日常生活では、つらい動作を繰り返す時間を短くする、作業の途中で休むなどの工夫も役立ちます。体重が多い方では無理のない減量も選択肢となり、必要に応じて杖や装具の使用を検討します。「運動すると痛そうで心配」という場合も、その不安を含めて相談しながら進めていきましょう。
薬や注射、手術は、必要性を確かめながら選びます
痛みが運動や日常生活の妨げになっている場合は、塗り薬・貼り薬、飲み薬などを検討します。薬には胃腸や腎臓などへの影響があるため、持病や、現在使っている薬を確認することが大切です。お薬手帳があれば、受診時にご持参ください。
注射も選択肢になることがありますが、種類によって目的や効果の続く期間が異なり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。期待できることや注意点を確認したうえで、ご自身に合うかを考えていきます。
薬や注射で痛みを調整することは、運動や生活動作に取り組みやすくするためにも役立ちます。治療の後は、痛みの変化だけでなく、「前より歩けるようになったか」「立ち上がりが楽になったか」といった点も確かめます。
こうした治療を行っても、歩行や睡眠などへの支障が大きい場合は、手術を検討します。膝の変形や全身の健康状態、希望する生活を踏まえて、人工膝関節などの手術が適しているかを判断します。「画像が悪いから」という理由だけで、治療を決めることはありません。
我慢しすぎず、今の困りごとをお聞かせください
痛みや腫れが続く、歩ける距離が短くなった、階段や立ち上がりがつらくなったときは、整形外科でご相談ください。痛みが始まった時期、痛む動作、これまでに受けた治療などをお伝えいただくと、診察の参考になります。
なお、急に強く腫れた、赤く熱を持って発熱もある、体重をかけられないほど痛む場合は、別の病気やけがの可能性もあります。そのようなときは、当日中に医療機関へご相談ください。
治療の目標は、画像の変化だけにとらわれず、その方の暮らしを支えることです。「買い物に歩いて行きたい」「趣味を続けたい」「家族と出かけたい」。そうした思いも、治療を考える大切な手がかりになります。今の膝の状態を確認しながら、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきましょう。
医療法人ユタカ会
すが整形外科 形成外科